トップカイザーサウンドオーディオクリニックの旅徹底した不要共振排除とS/Nの追求

徹底した不要共振排除とS/Nの追求



 オーディオテクネサウンドとは?


 約二年前になりますが、私にとって信じられない出来事がありました。K.NさんはスピーカーとCDプレーヤーを除いては、インシュレーターに始まり、ケーブル、アンプといった全てのアイテムをローゼンクランツ製品で揃えてくれていました。それがある日突然オーディオテクネのシステムに総入れ換えするので全てを処分したいと相談を持ちかけられたのです。

 最終的にはご自分でオークションに出品した結果、予想以上の高値で売れたと感謝されました。それにしても、ローゼンクランツサウンドにあれほど気に入って下さっていたのに、そこまでの気にさせた音とはどんなのだろうと気になるところではありました。

 オーディオテクネの製品はスピーカーのエンクロージャーはもちろん、スピーカースタンド、インシュレーター等オールカーボンで、『カイザーさんの音とはまるっきり正反対の音ですよ!』と聞かされました。当のご本人のお言葉ですから間違いはないのでしょう。その内一度は聴かせて頂こうと思っておりました。

 また今回の事とは別ですが、同じテクネさんに関係したお話です。あるお客さんをクリニック訪問した時に次のような内容を聞かされたのです。

 実は、貝崎さんとの仲なので白状しますが、3月に上京した際に八王子のオーディオテクネに伺いました。さすが音楽の本場、イタリアで高く評価されているだけあって、虚飾のない完成された音世界でした。オーディオ店は数多く参りましたが、これだけ音楽を聞かせてくれるところはカイザーとテクネ、この2つだけではないかと思います。

 完成度の高さではテクネさんに軍配上がりますが、カイザーさんにはまだこれからという領域が残されているような気がしました。それに音のくせのなさではテクネさんは素晴らしいですが、音楽の生気という点では俄然、カイザーさんに軍配が上がります。いずれも甲乙つけがたい世界で、正直、これからどうしようかと迷ったのも事実です。でも今回のクリニックとセッティング技術によって再現された、音楽の感情をストレートにそのままぶつけてくるローゼンクランツサウンドは他の何ものにも変え難いことにあらためて確信が持てました。


 実際に聴くカーボンづくしの音とは?


 この二つ目の件をきっかけにして、私は千葉県のK.Nさん宅に訪問させて頂くことになりました。『土、日ならいつでも構いませんよ』と言って頂いてたのですが、あいにくその日は江戸川の花火大会の日と合致したものですから、水戸街道は普段の3倍くらいの渋滞でわずか25キロほどの距離に2時間以上掛かってしまいました。翌日の新聞で知ったことですが、134万人の人出だったそうです。

 マンションの16畳ほどのリビングにセットされたオールカーボンのスピーカーは一種独特です。色、形状、また素材の持つ質感等は私には縁遠いと感じました。鳴っていた音楽はソプラノ独唱でしたから、元々低い音が入っていないのを差し引いても相当にハイ上がり気味バランス状態です。また持っている素材その物もデッドな上に、スピーカーのセッティングポジションも音が痩せる状態にある鳴り方です。すなわち低音の出ない要素が3つ重なっていたのです。


 カイザーゲージを使ってスピーカーセッティング


 「スピーカーの置かれている位置を少し前後させてやるだけで、

 今のハイ上がりなエネルギーバランスから、

 低・中・高のエネルギーが上手く揃った状態に出来ますがやってみましょうか?」。

 『今のシステムではどうやってもこれ以上低音は出ないものと思っていましたので、

 いずれアッテネーター式から性能の良いプリに変えようと思っていたのです』。

 『スピーカーの位置調整だけでそんな事が可能なんですか?・・・』。

 「可能です!、簡単ですからそれではこれからやってみましょう!」。

 「車からセッティング専用のカイザーゲージ如意棒を取ってきます」。


 私がスピーカーを前に動かそうとすると、

 『前に出せば壁から離れるから、更に低音が出なくなるのではないのですか?』と質問されました。

 「そうですね、普通はそんな風に言われていますが、実際はそうとばかりは言えないんです」。

 「まぁ、これから出る音をよく聴いて頂ければ分ります」。

 「如何ですか?、先ほどまでは力のない谷間の音でしたが、
 
 今は可能な限り力強いポイントに耳で合わせて見ました」。

 「ご覧下さいこちらの棒を!、今の所を山とすると、

 最初のポジションがカイザーゲージの谷間にあったのが音からしてもお分りでしょう」。

 『そうですね、確かに力強い低音と共に音楽に生命力が出てきました』。

 『不思議ですね!、そして何より低音、中音、高音と自然なバランスになりました』。

 部屋中の空気を効率よく動かせているから為せる業なんです、その効果は部屋のどこで聴いても音像バランスが崩れない形となって体感出来ます。正直な話、私はこの感触には今まで四半世紀に渡って数多くのお宅を訪問しておりますが、ただの一度でさえ出合った事はありません。それぐらい理想とするツボにスピーカーが収まっているのは奇跡に近い事なんです。でも、カイザーゲージに則って調整して頂きさえすれば、集中力とちょっとした努力で理想の音空間を創り出せるのです。


 中央に鎮座しているテレビの位置調整


 スピーカーとの真ん中に大型テレビが有り、ベルベット状のカバーが掛けられているとはいえかなり大きな反射面を持っていますので、前後の位置関係は上手く合わせ込まないとスピーカーだけのカイザーウェーブ乗せだけでは充分ではありません。もちろん耳で合わせるやり方ですが、スピーカーのポジションが決まっている関係で、音が音楽に変わるポイントはすぐに判断がつくものです。

 大方の場合この位相合わせが出来ていない状態で、真ん中に物があると悪影響が大きいと一般に言われています。通常では生活空間の中でステレオを聴くわけですから、家財道具の無い部屋なんて有り得ません。しからば、知恵を使うしかありません。そうした道具との関係を如何に好ましく連携させるかに掛かっています。


 周回遅れでも良いから足並みを揃える事が大切


 カイザーサウンドが提唱しているのは、周回遅れでも足並みが揃う事の方が大事なのです。それであれば倍音として音楽になります。スピーカーとテレビとの話しですが、両者が如何に理想の位置に限りなく近い関係にあっても結果としては不協和音にしかなりません。この場合、脇役のテレビがスピーカーに対してオクターブ単位で高い位置に移動するか、オクターブ単位で低い位置に移動するしかないのです。その関係がカイザー寸法の52.5ミリの倍数です。要するに同じ「ド」なら「ド」の位置に合わせなさいという事です。


 CDプレーヤーのセッティング


 その次に私が目を付けたのが、CDプレーヤーの足元です。オリジナルの足を外し、同じような円柱状のカーボン製の足に履き替えてあります。更にその足の下に10センチ角の厚み4センチほどのカーボンブロックがあります。何せ4点支持ですからどうしても1ヶ所浮いた状態にあるのです。これが力のない原因を作り出している元なのです。

 その対策として先ずブロックを退け、丸い足のみ3点で受けるように前の2ヶ所を外し前1点後ろ2点の3点支持に変更します。これも相当効きました。何せ最初の信号を扱う所ですから、そこが力の無い情報しか取り出せていなかったら、いくらアンプで増幅しても力の無いままの音がスピーカーから出て来るしかありません。

 ここまでの状態になってやっと音楽を感じ始めた入り口のドアーに手が掛かった感じです。これでも強弱のダイナミックレンジは私にとって6掛けに圧縮された感覚です。それぐらいカーボンという素材は振動を減衰させる習性を持っているのでしょう。私にとっては美味しい部分が殺がれて行くのが分りますので、このベクトルの方向には歩を歩めることはやはり出来ません。


 音楽の躍動感よりも音色の違いに敏感


 でも、わずかな短所でも気になって仕方がない人には、長所を伸ばす事よりも短所が少なくなる方を良しとするのが大分分ってきました。そこで更に実験という形でエネルギーをグイグイと前面に押し出すインシュレーターPB-BOSSをCDの下に入れて聴いて頂くことにしました。コンプレッションが大分取れダイナミックレンジは8掛けぐらいまで出て来るようになりました。

 その変化の具合をお尋ねしますと、『音楽の躍動感が出て来たのは認められるが、その長所の部分よりも響き過ぎる感じの方に違和感を憶える』というのがK.Nさんのコメントです。私にとっては好ましい方向への変化も、どうやらK.Tさんにとってはそうではなかったようです。ただセッティングによる音の向上については、ご自身にとっても全て有り難い方向に変わったので普遍的要素があるように思えたとの事でした。

 同じ音を聞いても人によっては聞こえ方も違うし、気になる所のセンサーにもかなり違いがある事がハッキリした今回の出来事でした。また大きな収穫を手に出来ましたので、こうしてクリニック訪問はその度に大変勉強になります。


← Back     Next →